貧血、めまい、動悸、息切れでお悩みですか?
貧血やめまい、動悸、息切れを感じる方は、赤血球やヘモグロビンの量が不足している可能性があります。貧血とは、血液中の赤血球が減少している状態を指し、成人男性の場合はヘモグロビン値が13g/dL未満、成人女性では12g/dL未満とされます。
めまいやふらつきは、脳に十分な酸素が供給されないことで発生します。急に立ち上がったときに目の前が暗くなる立ちくらみもその一例です。動悸や息切れは、心臓が酸素を効率的に供給するために通常よりも速く働くことによって引き起こされます。
これらの症状は、貧血(鉄欠乏性貧血や再生不良性貧血、溶血性貧血など)が原因となることがあります。適切な治療を受けるために、まず血液検査を受けることが重要です。
貧血、めまい、動悸、息切れの原因
貧血やめまい、動悸、息切れが見られる場合、以下のような病気が隠れていることがありますので、気になる症状がありましたら早めにご相談ください。
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は最も一般的なタイプの貧血で、体内の鉄分が不足することによって起こります。鉄はヘモグロビンの合成に必要不可欠で、その不足は酸素の運搬能力を低下させます。原因には不適切な食事、月経や消化管からの出血(潰瘍や癌)、思春期や妊娠中、授乳期の鉄需要の増加、鉄の吸収障害(胃切除、胃薬、ピロリ菌など)が含まれます。初期には疲労感や息切れ、肌の蒼白が見られ、進行するとめまいや集中力の低下、心拍数の増加が起こります。また、鉄欠乏に特徴的な症状として、爪が薄くなってスプーン上にへこんだり(スプーンネイル)、氷など食事以外のものを食べたくなる(異食症)などがあります。
検査では血液検査が行われ、ヘモグロビン濃度、赤血球数、鉄分濃度などが測定されます。治療は鉄剤の投与や食事の改善が主ですが、同時に鉄欠乏をとなった原因を調べることも重要です
巨赤芽球性貧血
ビタミンB12や葉酸の欠乏により、赤血球が正常に成熟できなくなることで発生します。赤血球の赤ちゃんである赤芽球が異常に巨大化し、正常な赤血球が不足します。原因として、ビタミンB12欠乏は胃炎や胃切除により吸収不良、葉酸欠乏は摂取不足(過度の飲酒や低栄養)、妊娠時や授乳時の必要量増加が知られています。症状には貧血による疲労感や息切れ、神経症状(しびれや運動障害)が見られます。
特に、胃粘膜から分泌される内因子(ビタミンB12 の吸収に重要)に対する抗体ができることで、ビタミンB12が欠乏する貧血を「悪性貧血」といいます。
診断は血液検査で行い、治療は欠乏しているビタミンの補充が基本となります。
悪性貧血
巨赤芽球性貧血のうち、胃粘膜から分泌される内因子に対する抗体ができてビタミンB12の吸収障害がおこる貧血です。本来、ビタミンB12は胃で分泌される内因子と結合して吸収されますが、自己免疫疾患によって内因子が攻撃されると、十分に吸収されなくなります。
再生不良性貧血
骨髄の造血幹細胞が減少し、正常な血液細胞(赤血球、白血球、血小板)が作れなくなる状態です。自己免疫反応や薬剤、化学物質、放射線、感染症が原因となることがありますが、90%以上は原因不明とされています。主な症状には全身の倦怠感、感染症リスクの増加、出血傾向が含まれます。診断には骨髄検査が必要で、血液検査では各種の血液成分の状態を確認します。治療には輸血、ステロイドや免疫抑制剤の投与、トロンボポエチン受容体作動薬の投与が行われます。重症な場合は、骨髄移植などの造血幹細胞移植が検討されます。治療法は年齢や健康状態により異なります。
溶血性貧血
赤血球が異常に早く破壊されることで発生する貧血です。正常な赤血球の寿命は約120日ですが、何らかの原因でこれが短縮されると貧血に陥ります。自己免疫疾患や遺伝的要因、感染症、特定の薬剤反応が原因となることがあります。主な症状は貧血に伴う疲労感や息切れ、赤血球の破壊による黄疸、褐色尿、脾臓の腫れです。診断は血液検査を通じて行い、治療は原因に応じて行われます。最も多いのは、自己免疫性溶血性貧血でステロイドや免疫抑制剤の投与、脾臓摘出が必要なことがあります。
骨髄異形成症候群
骨髄(血液の工場)にある、血液細胞の元となる造血幹細胞の異常が原因です。血液細胞の不良品を作り、正常な赤血球、白血球、血小板が作られなくなります。抗がん剤治療や放射線被曝がリスク要因とされています。症状には貧血による疲労感や感染症の頻発、皮膚のあざや出血、感染リスクの増加があります。診断には骨髄穿刺が必要です。治療は、低リスクの場合は無治療経過観察や輸血、エリスロポエチン製剤を投与することがあります。高リスクの場合は、アザシチジンという抗がん剤や骨髄移植などの造血幹細胞移植が考慮されます。
慢性疾患による貧血
がん、慢性炎症性疾患などの慢性の疾患でも貧血が生じることがあります。この場合、体内の炎症で、血液中の鉄が赤血球の産生にうまく利用できなくなり貧血を引き起こします。
腎性貧血
赤血球の産生にかかわる、エリスロポエチンという腎臓でつくられるホルモンがあります。腎臓の悪い方はエリスロポエチンの分泌が減り貧血になります。エリスロポエチン製剤の注射や、エリスロポエチンの産生を促す内服薬(HIF-PH阻害剤)による治療が行われます。
「貧血、めまい、動悸、息切れ」に関するよくある質問
めまいや立ちくらみが起こるのはなぜですか?
貧血があると、血液中の酸素を運ぶ役割を持つ赤血球が不足し、脳に十分な酸素が供給されません。そのため、めまいや立ちくらみが生じることがあります。
動悸や息切れが起こるのはどうしてですか?
赤血球が少ないと酸素を体内に効率的に運べなくなるため、心臓が通常よりも早いペースで働き、動悸や息切れが生じます。これも貧血の典型的な症状です。
動悸は必ず貧血の症状ですか?
動悸は貧血の症状の一つですが、必ずしも貧血だけが原因ではありません。心臓病や不安障害、甲状腺ホルモンの問題なども動悸の原因となることがあります。症状が頻繁に現れる場合は、医師に相談することが大切です。
貧血は女性に多い病気ですか?
特に鉄欠乏性貧血は女性に多く見られます。月経や妊娠、出産で鉄分が不足することが原因です。特に月経が多い場合や妊娠中は、意識して鉄分を補うことが重要です。
貧血が進行するとどんな危険があるのでしょうか?
貧血が重度になると、心臓に負担がかかり、心不全や心筋梗塞を引き起こすリスクが高まります。また、長期間放置すると、脳やその他の臓器への酸素供給が不足し、身体全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
貧血は遺伝することがありますか?
一部の貧血は遺伝性のものです。例えば、遺伝性球状赤血球症、鎌状赤血球症やサラセミアといった遺伝性の血液疾患が原因で貧血が生じることがあります。遺伝性貧血の場合、家族歴がある方は特に注意が必要です。
慢性的な疲労感は貧血が原因ですか?
貧血による酸素不足は、慢性的な疲労感の原因になることが多いです。ただし、疲労感は他の多くの病気やストレスによることもあるため、原因が特定できない場合は、医師の診察を受けて検査することが重要です。
貧血の症状が出るのはどれくらいのヘモグロビン値ですか?
貧血の症状が出始めるヘモグロビン値には個人差がありますが、一般的に10g/dl以下で症状が現れることが多いです。軽度の貧血では症状が出ないこともありますが、進行すると疲労感やめまい、息切れなどが顕著になります。
食事だけで貧血を改善することはできますか?
軽度の鉄欠乏性貧血の場合、鉄分が豊富な食事(レバー、赤身の肉、ほうれん草など)と、鉄分の吸収を助ける作用のあるビタミンCの摂取で改善が期待できます。また、コーヒーや緑茶・紅茶・ウーロン茶などに含まれるタンニン、カフェインは鉄の吸収を妨げるので、なるべく避けた方良いです。カルシウムも鉄の吸収を妨げるので、乳製品の過剰摂取には注意しましょう。 しかし、重度の場合や他の原因による貧血では、食事だけでは改善しにくく、鉄剤や他の治療が必要なことがあります。
妊娠中に貧血がある場合、胎児に影響がありますか?
妊娠中に貧血があると、胎児への酸素供給が不十分になり、発育不全や早産のリスクが高まります。妊娠中は鉄欠乏、葉酸欠乏による貧血をきたしやすくなります。母体だけでなく胎児の健康にも影響があり、特に葉酸欠乏は二分脊椎や脳瘤などの先天異常の原因となります。妊娠中は適切な鉄分、葉酸の摂取と定期的な検査が必要です。