貧血について
皆様こんにちは。
伊勢原あおやまクリニック院長の青山です。
ブログを始めて病気の話をしておりませんでした。
そろそろ医療機関らしく、病気の話をさせていただきます。
私の内科、血液内科が専門です、得意分野の一つでもある、貧血について解説いたします。
この時期、健診で貧血を指摘される方も多いと思うので、参考になれば幸いです。
貧血とは?
全身に酸素を運ぶための血液の中の成分である、「ヘモグロビン」という赤血球に含まれるタンパク質が不足した状態です。
赤血球に含まれる、この「ヘモグロビン」が全身の血液をめぐり、各臓器や組織に酸素を運んでいます。
下記の絵がイメージ図です。
Hb: ヘモグロビン、O2: 酸素
一番大きい赤い丸いものが赤血球です。
ヘモグロビンが足りなくなると、酸素が全身に運べなくなるので、酸欠状態になってしまいます。どのタイプの貧血にも共通の症状として、下記が出現します。
・顔が青白くなる。
・立ちくらみ
・動機
・息切れ
・疲れやすい
ただ、肺や心臓の病気など、貧血以外の病気でもこれらの症状を認めることがあります。
したがって、症状のみで貧血と診断することは難しく血液検査が必須となります。
また、1つ注意しなくてはならないことを知っていただきいです。
人間の体は非常によくできており、ゆっくりと貧血が進行すると、自覚症状が感じにくいことも多いのです。
例えばヘモグロビン正常値の人が、出血などで7〜8g/dlまで急に低下したら、かなり体がきつい状態となり歩くのも難しくなることもあります。
ただ、ゆっくりヘモグロビンが低下すると、自覚症状がでにくく、かなり進行してからでないと気づかないこともあります。
なので、健康診断はぜひ受けてください。また、健康診断で貧血を指摘され、特に「要受診」となった際は、自覚症状なくても必ず医療機関を受診してください。大きな病気が隠れている場合もあります。
貧血の原因
出血、材料不足、骨髄の異常、赤血球寿命の低下に主に分けられます。
出血については説明不要だと思うので、その他について簡単に説明します。
【材料不足について】
ヘモグロビンをつくるには様々な材料が必要ですが、鉄分、ビタミンB12、葉酸などの不足で貧血になります。特に、鉄分不足が原因の鉄欠乏性貧血は、貧血の種類の中でも最も多いものです。
ただ、現代人が食事のみで、これらのが不足し貧血までなることはあまり考えにくいです。必ず、食事以外の材料が不足する原因を調べる必要があります。
特に鉄欠乏性貧血は出血が原因となることが多く、若い女性の月経が主な要因です。
しかし、胃や腸の何らかの病変(胃がん・胃潰瘍、大腸がんなど)からの出血でも鉄欠乏性貧血になることがあります。
ゆっくりじわじわ出血していると便と混ざり合って、排便後に便の色を見ても気づかないこともありますので注意が必要です。
【骨髄の異常】
骨髄で異常な細胞が増えて、正常な赤血球を増えることを妨げたり、赤血球をつくる能力自体が落ちてる病気が原因となります。
前者は白血病、骨髄異形成症候群など「血液のがん」が主な原因です。
後者は再生不良性貧血や赤芽球癆などが原因となります。
聞き慣れない病気だと思いますが、それぞれの詳細を説明するのは長文になりますので、ここでは割愛します。
ただ、骨髄異形成症候群という病気は皆様に知っておいてほしいです。
加齢とともに発症頻度が増える「血液のがん」であるのですが、緩徐に進行することが多く、自覚症状が出ない場合も多いです。
低リスクの骨髄異形成症候群であれば、何年も病状に変化のないこともあるのですが、高リスクの場合は短期間で白血病へ移行することがあるため、早期発見、早期治療が重要です。
なので、自覚症状がなくとも貧血を指摘されたら、ぜひ医療機関を受診していただきたいです。
【赤血球寿命の低下】
いくつかの原因があります。
1. 赤血球を壊す抗体ができる
自己免疫性溶血性貧血、寒冷凝集素症など
2. 遺伝的に赤血球やヘモグロビンの形が異常
遺伝性球状赤血球症、サラセミア、鎌状赤血球症
後者2つは日本人には稀です。
3. その他
マラリア: マラリアが赤血球内で増殖し破壊
発作性夜間血色素尿症、血栓性血小板減少性紫斑病: 血管内で赤血球が壊れやすい状態になる。
治療
原因によって、それぞれ異なります。
材料不足に場合は、その材料の補充とともに、原因を探る必要があります。
また、「血液のがん」に関しては抗がん剤や骨髄移植が必要になることもあります。
今回は以上になります。少しマニアックな病名もでてきましたが、特に今回皆様に知っていただきたいのは下記です。
1. 鉄欠乏性貧血は、胃がんや大腸がんなどが隠されている場合があり、鉄欠乏になった原因を探ることが必要です。
2. 加齢とともに発症頻度が増える「血液のがん」の1つである、骨髄異形成症候群は無症状のことも多いです。
ただ、早期に白血病へ移行する状態のこともあります。早期発見、早期治療が予後に関わります。
各病気の詳しいことは、時期をみてブログで解説させていただこうと思います。
皆様、引き続きよろしくお願いいたします。